石川県七尾市の和倉温泉を、傷ついたシラサギが湯を見つけた開湯伝説、ナトリウム・カルシウム塩化物泉という塩分の濃い「海の温泉」、加賀屋に代表される宿、和倉温泉総湯、北陸新幹線敦賀延伸後のアクセス、そして2024年能登半島地震からの復興途上の現状まで、和倉温泉観光協会や国土交通省などの出典をふまえて整理します。
公開日: 2026.01.14
石川県七尾市の和倉温泉を、傷ついたシラサギが湯を見つけた開湯伝説、ナトリウム・カルシウム塩化物泉という塩分の濃い「海の温泉」、加賀屋に代表される宿、和倉温泉総湯、北陸新幹線敦賀延伸後のアクセス、そして2024年能登半島地震からの復興途上の現状まで、和倉温泉観光協会や国土交通省などの出典をふまえて整理します。
公開日: 2026.01.14
和倉温泉は、石川県七尾市の七尾湾に面した温泉地で、約80度の高温源泉が海ぎわから湧き、塩分の濃い湯が楽しめる「海の温泉」であることが最大の特徴である。山あいの渓谷温泉とは性格が異なり、湾を望む眺めと能登の海の幸、そして老舗旅館の宿文化が一体になっている点が、能登半島を代表する名湯として知られる理由だ。
ただし、和倉温泉について最初に知っておくべきは、2024年1月1日の能登半島地震で温泉街が甚大な被害を受け、現在も復興の途上にあるという事実である。旅館協同組合の全旅館がいったん休業を余儀なくされ、2026年時点でも営業を再開した宿は一部にとどまる。この記事では、和倉温泉の泉質・歴史・回り方を整理しつつ、訪問前に必ず確認したい現在の状況を、和倉温泉観光協会や国土交通省の公式情報をふまえて具体的にまとめる。
和倉温泉でまず押さえたいのが泉質だ。和倉温泉観光協会によれば、泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉(高張性弱アルカリ性高温泉)で、約80度の無色透明な高温源泉が湧く。「海の温泉」ならではの豊富な塩分が特長とされ、舐めると明確に塩辛い濃い湯である。
塩分を含む湯は肌に薄い塩の被膜をつくり、入浴後も体が冷めにくいのが塩化物泉の傾向で、「熱の湯」とも呼ばれる。さらに和倉の湯は「高張性」とされる。これは溶け込んだ成分の濃度が体液より高い湯のことで、成分が肌に作用しやすい一方、体への負担も大きくなりやすい。高温・高張性の濃い塩化物泉は温まりが強い分、長湯はのぼせや疲労につながりやすいため、入浴は時間で区切り、合間に休憩と水分補給を挟むほうが無理が少ない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 泉質 | ナトリウム・カルシウム塩化物泉 |
| 区分 | 高張性弱アルカリ性高温泉 |
| 源泉温度 | 約80度 |
| 湯の色・味 | 無色透明・塩辛い(塩分が濃い) |
| 体感の傾向 | 保温性が高く温まりやすい(熱の湯) |
「美肌の湯」と紹介されることもあるが、強い美容効果を約束するものとして受け取るより、入り心地や保温感の傾向として理解するのが妥当だ。塩化物泉をはじめとする泉質ごとの違いを整理したい場合は温泉の泉質ガイドを参照してほしい。確実な泉質名や成分は、各施設に掲示された温泉分析書で確認できる。
和倉温泉の歴史は古く、和倉温泉観光協会によれば、開湯はおよそ1200年前の大同年間(806年〜810年)にさかのぼると伝わる。その後、平安中期の永承年間(1046年〜1053年)に地殻変動が起き、湧き口が沖合60メートルの海中へ移動して、もとの湯は枯れてしまったという。
このとき、和倉に暮らしていた漁師夫婦が、海面がぶくぶくと泡立つ場所で傷ついた一羽のシラサギが身を癒しているのを見つけ、海中の湧口が再発見されたと伝わる。これが和倉に伝わる「シラサギ伝説」で、海から湧く温泉という和倉らしさを象徴する話になっている。なお地名は、当初「湯が湧き出づる浦」を意味する「涌浦(わくうら)」と呼ばれていたが、書き間違えやすいという理由から、延宝2年(1674年)に現在の「和倉」へ改められたと伝わる。
湯が海から湧く成り立ちと、それを見つけたシラサギの言い伝えを知っておくと、海ぎわの湯を眺める見え方が少し変わる。
和倉温泉を語るうえで欠かせないのが、宿の文化だ。なかでも加賀屋は、長年にわたり「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で総合日本一に選ばれ続けてきた老舗として全国に知られ、和倉のもてなし文化を象徴する存在となってきた。和倉は、泉質を素朴に味わう共同浴場巡りの温泉地というより、湾を望む大浴場と旅館滞在の質に価値が出やすいタイプの温泉地である。
宿泊以外で湯を試したいなら、和倉温泉総湯が分かりやすい選択肢になる。和倉温泉観光協会によれば、総湯は地元の人も観光客も利用できる共同浴場で、昔から守り続けられてきた源泉100%の湯を提供している。旅館の大浴場とは雰囲気が異なるため、豪華さよりも「土地の海の湯を手軽に知る場所」として考えるとよい。旅館・日帰り入浴・共同浴場といった施設タイプの違いは日本の入浴施設の種類で整理している。
宿で過ごす時間そのものが目的になりやすい和倉では、海が見える客室か、湾側の大浴場・露天があるか、源泉の使い方はどうか、夕食の海の幸の内容はどうか、といった条件で宿を比べると満足度が変わりやすい。後述のとおり営業状況や施設の状態は宿ごとに大きく異なるため、予約前に各宿の最新情報を直接確かめることが、いまの和倉では特に重要になる。
和倉温泉を訪れるうえで最も重要なのが、2024年1月1日の能登半島地震による被害と、その後の復旧状況である。国土交通省の資料によれば、地震により和倉温泉の旅館では外壁のひび割れ、温泉配管の破断、断水などの被害に加え、海沿いに建ち並ぶ旅館では七尾湾の護岸が崩壊する被害が生じ、旅館協同組合に加盟する全旅館が休業を余儀なくされた。和倉は宿泊施設数では能登半島全体の一部にすぎないが、客室数100室以上の大型宿や延べ宿泊者数では半数程度を占めるとされ、その休業は能登観光全体に大きく影響している。
国は2025年3月に「護岸復旧と一体となった和倉温泉の地域観光再生支援プラン」を策定し、護岸復旧工事と旅館の再建を一体で進めながら、営業再開情報や工事の進捗を発信している。和倉温泉観光協会の情報によると、2026年時点で営業を再開した旅館は一部にとどまり、再開した宿のなかにも、解体・建設工事中のため玄関やロビーがなく仮設設備で「仮営業」として受け入れているところや、護岸工事のため海側の景観が一時的に損なわれているところがある。象徴的存在だった加賀屋も主力の宿泊棟の解体を進め、本格的な再開はなお先と報じられている。
| 状況 | 内容(2026年時点・最新は要確認) |
|---|---|
| 全体 | 旅館協同組合の全旅館が一時休業。一部が順次再開 |
| 再開した宿 | 通常営業のほか、仮設設備での「仮営業」も含まれる |
| 景観 | 護岸復旧工事中で、海側の眺めが一時的に損なわれる宿がある |
| 再開時期 | 宿により異なり、今後再開予定の宿もある |
復興は進みつつあり、訪れること自体が地域の支えにもなる。一方で、営業しているか、どの設備が使えるか、景観や食事はどうかは宿ごとに大きく異なり、状況は刻々と変わっている。訪問を計画するなら、各旅館の公式サイトや和倉温泉観光協会の発信で、必ず最新の営業状況を確認したうえで予約してほしい。営業中の宿や日帰り入浴施設を地域や予算で探す際は施設一覧や検索ページも用意しているが、掲載情報と実際の営業状況が一致しているかは、予約前に各施設へ直接確認することをすすめる。
和倉温泉の玄関口はJR和倉温泉駅だ。2024年3月16日の北陸新幹線・金沢〜敦賀間の延伸により、首都圏や関西圏からのアクセスが向上し、東京からは乗り継ぎで最速3時間半前後、大阪からも3時間台が目安とされる。金沢方面からは七尾線の特急で和倉温泉駅へ向かうのが基本で、駅から温泉街までは送迎やタクシーを利用する。和倉温泉駅から先、能登中島方面へはのと鉄道が接続している。
能登半島を広く周遊するなら車が便利だが、地震の影響で道路や護岸の工事が各所で続いているため、ルートや所要時間が通常と異なる場合がある。公共交通・車のいずれでも、ダイヤや道路状況、宿の送迎の有無を事前に確認しておくと余裕が出る。和倉を能登観光の拠点にするのか、宿でゆっくり過ごす目的地にするのかを先に決めておくと、限られた時間の配分に迷いにくい。
ナトリウム・カルシウム塩化物泉(高張性弱アルカリ性高温泉)とされます。約80度の無色透明な高温源泉で、塩分が濃い「海の温泉」が特徴です。塩化物泉は保温性が高く入浴後も温かさが続きやすい湯で、高張性で温まりが強いため、長湯を避けて休憩と水分補給を挟むのが無難です。
およそ1200年前の大同年間(806年〜810年)に開湯したと伝わります。のちに地殻変動で湧き口が海中へ移り湯が枯れた後、漁師夫婦が海面の泡立つ場所で傷を癒すシラサギを見つけ、海中の湧口が再発見されたという「シラサギ伝説」が知られています。
地震で旅館協同組合の全旅館が一時休業し、2026年時点で再開した宿は一部にとどまります。仮設設備での仮営業や、護岸工事による景観への影響がある宿もあります。状況は変化しているため、各旅館の公式サイトや和倉温泉観光協会で最新の営業状況を確認したうえで計画してください。
加賀屋は地震で被災し、主力の宿泊棟の解体を進めるなど再建途上で、本格的な営業再開はなお先と報じられています。最新の状況は加賀屋および加賀屋グループの公式発信で確認してください。
JR和倉温泉駅が玄関口です。2024年3月の北陸新幹線・金沢〜敦賀間の延伸で都市部からのアクセスが向上し、金沢方面からは七尾線の特急で向かうのが基本です。駅から温泉街へは送迎やタクシーを利用します。震災に伴う工事でルートや所要時間が変わる場合があるため、事前確認をすすめます。
和倉温泉は、七尾湾に面し、約80度の高温源泉が湧くナトリウム・カルシウム塩化物泉の「海の温泉」で、シラサギの開湯伝説と加賀屋に代表される宿文化を背負う、石川県七尾市の名湯である。塩分の濃い高張性の湯と、湾を望む眺め、能登の海の幸が一体になっている点が、ほかの温泉地にはない個性をつくっている。
一方で、和倉はいま、2024年能登半島地震からの復興の途上にある。営業状況や施設の状態は宿ごとに大きく異なり、護岸復旧などの工事も続いている。訪れること自体が地域の支えにもなるが、計画する際は、各旅館や和倉温泉観光協会の公式情報で必ず最新の営業状況を確認してほしい。同じ加賀・石川の名湯として、温泉街を歩いて味わう山代温泉と性格を比べてみるのも、北陸の温泉旅の組み立ての参考になる。