泥湯(泥温泉)とは何かを、普通の温泉との違い、火山性の鉱泥を含む湯の成り立ち、別府や秋田の代表的な泥湯、入り方とマナー、濁り湯ゆえの足元や硫化水素の注意まで中立的に整理します。
公開日: 2026.01.09
泥湯(泥温泉)とは何かを、普通の温泉との違い、火山性の鉱泥を含む湯の成り立ち、別府や秋田の代表的な泥湯、入り方とマナー、濁り湯ゆえの足元や硫化水素の注意まで中立的に整理します。
公開日: 2026.01.09
泥湯(泥温泉)とは、火山性の泥や鉱物質の沈殿物を含む温泉、またはその泥を体に塗って楽しむ温浴のことである。湯が灰色や茶褐色に濁り、手ですくえるほどの泥がたまる浴槽もあるため、初めて見ると「本当に入ってよいのか」と戸惑いやすい。
結論から言えば、泥湯は火山地帯に多い特殊な温泉体験であり、楽しみ方は施設ごとに大きく異なる。泥を含んだ湯にただ浸かるだけの施設もあれば、湯底の泥を肌になじませる施設もある。共通して大切なのは、泥を浴槽の外に持ち出さないこと、現地の案内に従うこと、そして濁って底が見えないぶん足元に注意することだ。
この記事では、泥湯とは何か、普通の温泉や白濁の湯との違い、別府・秋田など代表的な泥湯、基本の入り方とマナー、入浴時の注意を中立的に整理する。湯が濁る仕組み全般は白濁の湯(にごり湯)が白く濁る理由に、泉質10種類の全体像は温泉の泉質ガイドに譲る。
本記事は一般的な情報であり、特定の効能や美容効果を保証するものではありません。泥湯は底が見えにくく滑りやすいことがあります。持病のある方や体調のすぐれない方は、無理をせず施設の案内に従ってください。
泥湯と呼ばれるものは、おおむね二つに整理できる。
ひとつは、火山活動でできた泥(鉱泥)そのものを含む温泉だ。火山地帯では、地下から噴き上がる高温の蒸気やガスが周囲の岩石を変質させ、硫黄や硫化鉄などの沈殿物と混じり合って、灰白色の細かい泥をつくる。この泥を含んだ湯に浸かる温浴が、いわゆる泥湯・鉱泥温泉である。
もうひとつは、湯底や別容器の泥を肌になじませる「泥パック」のような楽しみ方を含む温浴だ。施設によっては、浸かるだけでなく、すくった泥を腕や脚にのせて体験できる場合がある。
ただし「泥湯」という名前がついていても、実際の湯が泥状とは限らない点には注意したい。たとえば秋田県湯沢市の泥湯温泉は、かつて湯が泥水のように濁っていたことが名の由来とされるが、現在は複数の源泉があり、必ずしも泥が手にすくえるわけではない。名称だけで判断せず、その施設で何ができるのかを確認することが大切だ。
泥湯がふつうの透明な温泉と違うのは、まず見た目である。灰色や茶褐色に濁り、底や段差が見えにくい。さらに、泥が体に付着するため、上がる前にしっかり洗い流す必要がある。
似た見た目の湯に、白く濁った「にごり湯(白濁の湯)」がある。白濁は溶けていた成分が微細な粒子として析出し、光を散らして白く見える状態だが、泥湯はそれより粒の大きい泥状の沈殿物を伴い、手ですくえるほどの濃さになることがある。もっとも両者は地続きで、火山性の温泉地では白濁の湯と泥湯が近接して湧くことも多い。濁る仕組みそのものは白濁の湯(にごり湯)が白く濁る理由でくわしく扱う。
日本の泥湯は火山地帯に集中している。代表的なものを整理すると次のようになる。状態や利用方法は施設ごとに異なるため、訪れる前に最新情報を確認してほしい。
| 地域・温泉 | 特徴 | 楽しみ方の傾向 |
|---|---|---|
| 大分・別府(坊主地獄系) | 灰色の熱泥が沸騰し坊主頭のように盛り上がる地獄。鬼石坊主地獄は観賞が中心 | 地獄は見学。一部で鉱泥に浸かれる入浴施設がある |
| 大分・別府(明礬・紺屋地獄ほか) | 火山性の鉱泥を使う泥湯で知られる温泉地 | 灰色の鉱泥を含む湯に浸かる |
| 秋田・後生掛温泉(八幡平) | 火山現象が顕著な地で、硫黄分を含む鉱泥を用いる泥風呂などがある | 泥を含む湯に浸かる・湿布的に使う形も |
| 秋田・泥湯温泉(湯沢市) | 名は昔の濁り湯に由来。現在は複数源泉があり泥状とは限らない | 源泉により濁り方が異なる |
別府では、坊主地獄系の地獄そのものは高温(鬼石坊主地獄は泉温が約99℃)で、噴き上がる灰色の熱泥を見学する観賞対象である。これとは別に、別府には灰色の鉱泥に実際に浸かれる珍しい入浴施設もあり、午前中だけの営業など独自のルールを設けている例がある。「地獄=見学」「鉱泥温泉=入浴」と区別すると分かりやすい。
秋田・八幡平の後生掛温泉は、噴気孔やマッドポット、大泥火山が広がる火山地帯にあり、硫黄分を含む鉱泥を用いた泥風呂などで知られる。一方、同じ秋田の泥湯温泉(湯沢市)は名称こそ「泥湯」だが、前述のとおり現在の湯が泥状とは限らない。実際に泥湯のある施設を探すときは施設一覧から比べるとよい。
初めてなら、次の流れが安全で、周囲にも配慮できる。
最初から全身に厚く塗る必要はない。少しずつ試すほうが、肌への刺激も汚れの広がりも抑えられる。なかでも大切なのは、泥を浴槽の外やタオル・脱衣所に持ち出さないことだ。泥は共有空間を汚しやすく、泥湯の清潔を保つうえでも、入る前のかけ湯と上がる前の洗い流しが欠かせない。
泥湯ならではの注意点もある。まず、湯が濁って底が見えにくいことだ。浴槽の深さや段差、泥のたまり具合が分からず、足をすべらせやすい。出入りのときはへりや手すりにつかまり、ゆっくり動くのが無難である。湯底の泥はぬめりがあるため、立ち上がるときも急がないほうがよい。
次に、火山性の泥湯では硫黄(硫化水素)を伴うことがある。硫化水素は換気の悪い場所に滞留すると危険なガスになり、源泉地帯や噴気帯では過去に事故も起きている。実際、秋田の泥湯温泉では2005年に近くの窪地で硫化水素ガスによる中毒事故が起き、立ち入り禁止区域が設けられた経緯がある。通常の営業浴場で過度に心配する必要はないが、こもりを感じたら長湯を避け、立入禁止の表示には必ず従いたい。硫黄を伴う湯の匂い・色・ガスのくわしい仕組みと注意は硫黄泉の匂いと色で扱う。
成分が濃い湯では、いきなり長湯をせず短めの入浴から試す。高齢の方や持病のある方は、温泉に入る前の注意点もあわせて確認してほしい。なお、泥湯は「美肌の湯」と紹介されることがあるが、本記事では効果として断定せず、泥の独特な肌ざわりや火山地帯ならではの体験を楽しむ位置づけで捉える。
火山性の泥や鉱物質の沈殿物を含む温泉、またはその泥を肌に使って楽しむ温浴のことです。湯が灰色や茶褐色に濁り、手ですくえるほどの泥がたまる浴槽もあります。火山地帯に多く、状態や楽しみ方は施設ごとに異なります。
施設によります。顔への使用を案内している施設もあれば、そうでない施設もあります。目や口に入ると刺激になるため、案内がない場合は顔には使わないほうが無難です。必ず現地の表示を優先してください。
「美肌の湯」と紹介されることはありますが、本記事では効果を断定しません。泥の感触や火山地帯ならではの体験として楽しむのがよいでしょう。肌が敏感な方や傷がある部位への使用は避け、合わないと感じたらすぐにやめてください。
濁って底が見えにくいため、出入りはゆっくり、手すりやへりにつかまって動いてください。泥を浴槽の外に持ち出さず、上がる前に洗い流すのがマナーです。硫黄を伴う湯では、換気の悪い場所でのこもりや、源泉地帯・窪地の立入禁止表示にも注意してください。
そうとは限りません。秋田県湯沢市の泥湯温泉は、かつて湯が濁っていたことが名の由来とされますが、現在は複数の源泉があり、必ずしも泥がすくえるわけではありません。名称だけで判断せず、施設の案内を確認してください。
泥湯(泥温泉)とは、火山性の泥や鉱物質の沈殿物を含む温泉、またはその泥を肌に使って楽しむ温浴である。別府の坊主地獄系や明礬、秋田・八幡平の後生掛温泉など、火山地帯に代表例が多い。一方で「泥湯」と名のつく湯がすべて泥状とは限らず、楽しみ方も施設ごとに異なる。
旅行者として押さえておきたいのは、泥を浴槽の外に持ち出さず上がる前に洗い流すというマナー、濁って底が見えにくいぶん足元に気をつけること、そして硫黄を伴う火山性の湯では換気や立入禁止表示に従うことだ。美容効果を期待しすぎるより、火山地帯ならではの特殊な温泉体験として、短時間から無理なく楽しむのがよい。