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泉質・科学編

茶褐色の温泉:日本の大地が作る鉄分豊富な温泉|色が変わるメカニズムを解説

茶褐色に染まる理由と鉄分の酸化メカニズムを解説。日本の大地が育む鉄分豊富な温泉の魅力を紹介します。

茶褐色に染まった温泉を見たことがあるだろうか。まるで紅茶のような色だ。この独特の色は、鉄分が酸化したことによるものだ。含鉄泉の多くは、この茶褐色を呈する。

茶褐色の温泉とは何か

茶褐色の温泉とは、鉄分を多く含む含鉄泉が、空気に触れて酸化し、赤茶色から黄褐色に染まった温泉を指す。

色の濃さは、鉄分の濃度によって異なる。薄い黄色から、濃い赤茶色まで、様々なバリエーションがある。

なぜ茶褐色になるのか

茶褐色の温泉が生まれるメカニズムは、単純だ。

地下から湧き出たばかりの含鉄泉は、透明だ。鉄イオンが水に溶けた状態だからだ。

しかし、空気に触れると、鉄イオンが酸化する。酸化した鉄は、鉄錆(さび)になる。この鉄錆が、茶褐色の正体だ。

つまり、茶褐色の温泉は、「新鮮な含鉄泉」の証拠なのである。

色が変わる瞬間を見る

含鉄泉の面白いところは、色が変わる過程を見られることだ。

源泉が湧き出る場所では、透明な水が流れている。それが空気に触れると、徐々に黄色っぽくなり、やがて茶褐色に変わる。

この変色の過程を観察できる施設もある。化学反応が目の前で起きている。まさに「生きている温泉」を実感できる。

茶褐色の温泉の種類

茶褐色の温泉は、主に含鉄泉だが、鉄イオンの種類によって細分化される。

鉄(II)-炭酸水素塩泉: 最も一般的な含鉄泉。茶褐色に染まる。

鉄(II)-硫酸塩泉: 硫酸塩と鉄の組み合わせ。茶褐色になる。

また、含鉄泉以外でも、鉄分を含む温泉は茶褐色になることがある。

代表的な茶褐色の温泉

有馬温泉の金泉(兵庫県): 日本三名泉の一つ。赤茶色の「金泉」として有名。鉄分と塩分を多く含む。

鳴子温泉(宮城県): 多様な泉質が楽しめる温泉地。茶褐色の含鉄泉もある。

川湯温泉(和歌山県): 川原を掘ると温泉が湧き出る。鉄分を含み、茶褐色。

茶褐色の温泉の効能

茶褐色の温泉(含鉄泉)は、鉄分を豊富に含む。

入浴による鉄分の吸収は限定的だが、飲泉すれば鉄分を体内に取り込める。貧血改善に効果があるとされている。

また、血行促進効果もある。体を芯から温め、冷え性改善に役立つ。

入浴時の注意点

茶褐色の温泉に入る際は、いくつか注意点がある。

タオルが染まる: 鉄錆が付着して、タオルが茶色く染まる可能性がある。施設のタオルを使うか、古いタオルを持参すること。

白い衣類は避ける: 入浴後、白い服を着ると、鉄錆が付いて茶色くなる可能性がある。色の濃い服を選ぶこと。

浴槽に鉄錆が付着: 施設側もこまめに清掃しているが、浴槽や洗面器に鉄錆が付着していることがある。これは「本物の含鉄泉」の証拠だ。

茶褐色の温泉の楽しみ方

茶褐色の温泉は、視覚で楽しむ温泉だ。

紅茶のような色のお湯に浸かる。独特の色彩を楽しむ。「鉄分が豊富」という実感を得る。

また、源泉が透明から茶褐色に変わる過程を観察するのも面白い。化学反応をリアルタイムで見られる貴重な体験だ。

飲泉できる施設では、鉄分を味わうこともできる。金属の味がするが、これが「鉄分」の味だ。

まとめ

茶褐色の温泉は、鉄分を豊富に含む含鉄泉が酸化したものだ。紅茶のような独特の色彩が魅力だ。

湧き出た瞬間は透明で、空気に触れると茶褐色に変わる。この変色の過程を見られるのも、含鉄泉の面白さだ。

飲泉すれば貧血改善に効果があるとされている。タオルが染まる可能性があるので、注意が必要だが、それも「本物の含鉄泉」を楽しむ醍醐味だ。茶褐色の温泉を見つけたら、ぜひ体験してほしい。