Background
泉質・科学編

温泉の湧く仕組み:日本の大地からの贈り物|温泉が湧き出るメカニズムを解説

日本の温泉が湧くメカニズムを解説。火山性・非火山性温泉と、地下から湧き出る温泉の科学を紹介します。

温泉が湧き出る瞬間を見たことがあるだろうか。地面から、熱いお湯が噴き出す。白い湯気が立ち上る。これは、地下で起きている驚異的な現象の結果だ。

温泉は、どのようにして湧き出るのか。地下で何が起きているのか。そのメカニズムを解説していこう。

温泉が湧く3つの条件

温泉が湧くためには、3つの条件が必要だ。

  1. : 地下に水が存在すること。
  2. : 水を加熱する熱源があること。
  3. 通路: 水が地表に出てくる通路があること。

この3つが揃うと、温泉が湧き出る。

条件1:水(地下水)

温泉の源は、雨水や雪解け水だ。

雨が降ると、水は地面に浸透する。地下深くまで浸透した水は、地下水となる。この地下水が、温泉の原料だ。

日本は雨が多い国だ。年間降水量は、世界平均の約2倍。豊富な雨水が、豊富な温泉を生み出す。

条件2:熱(熱源)

地下水を加熱する熱源には、2種類ある。

火山性の熱源(マグマ)

火山の下には、マグマがある。マグマの温度は、約800~1,200℃だ。

マグマが地下水を直接加熱する。または、マグマから放出される高温の蒸気やガスが、地下水を加熱する。

火山性温泉の多くは、この方式で生まれる。高温で、成分が濃い温泉が多い。

非火山性の熱源(地温勾配)

火山がない地域でも、温泉は湧く。その熱源は、地温勾配だ。

地温勾配とは、地下に行くほど温度が上がる現象だ。平均的に、深さ100mごとに約3℃上昇する。

つまり、深さ1,000mでは、地表よりも約30℃高い。深さ2,000mでは、約60℃高い。

深い地下まで浸透した地下水は、この地温勾配によって加熱される。これが、非火山性温泉だ。

条件3:通路(断層・亀裂)

加熱された地下水は、地表に出てくる通路が必要だ。

断層・亀裂

地下には、断層や亀裂がある。地震や地殻変動によって、岩盤に隙間ができる。

加熱された地下水は、この断層や亀裂を通って、地表に上がってくる。これが、温泉の湧出口だ。

圧力

加熱された地下水は、圧力が高い。この圧力が、水を地表に押し上げる。

特に、火山性温泉では、高温・高圧の蒸気が水を押し上げる。間欠泉のように、定期的に噴き出す温泉もある。

火山性温泉の湧く仕組み

火山性温泉が湧くメカニズムを、ステップごとに説明しよう。

  1. 雨水が地下に浸透: 雨水が地面に浸透し、地下水となる。
  2. マグマが地下水を加熱: 火山の下にあるマグマが、地下水を加熱する。
  3. 火山ガスが溶け込む: 硫化水素、二酸化炭素などの火山ガスが、地下水に溶け込む。
  4. 圧力が高まる: 加熱された地下水は、圧力が高まる。
  5. 断層・亀裂を通って湧出: 高圧の地下水は、断層や亀裂を通って、地表に噴き出す。

このプロセスを経て、火山性温泉が生まれる。

非火山性温泉の湧く仕組み

非火山性温泉が湧くメカニズムは、若干異なる。

  1. 雨水が地下深くに浸透: 雨水が、地下数千メートルまで浸透する。
  2. 地温勾配によって加熱: 深い地下では、地温勾配によって温度が上がる。地下水が加熱される。
  3. 地下の成分が溶け込む: 地下の岩石や鉱物の成分が、地下水に溶け込む。
  4. 長い時間をかけて上昇: 加熱された地下水は、長い時間をかけて、断層や亀裂を通って上昇する。
  5. 地表に湧出: 数百年~数千年かけて、地表に湧き出る。

非火山性温泉は、火山性温泉よりも時間がかかる。しかし、成分は決して薄くない。

源泉の種類

温泉の湧き方には、いくつかのパターンがある。

自噴泉

地下の圧力によって、自然に噴き出す温泉。ポンプは不要。

草津温泉の湯畑のように、常に湧き出し続ける。最も贅沢な温泉だ。

掘削泉

井戸を掘って、地下水を汲み上げる温泉。

深さ数百メートル~数千メートルまで掘削する。ポンプで汲み上げる。

間欠泉

一定の間隔で噴き出す温泉。

地下で蒸気が溜まり、圧力が高まると、一気に噴き出す。アメリカのイエローストーンの「オールド・フェイスフル」が有名だ。

日本では、大分県の別府温泉に間欠泉がある。

温泉の年齢

温泉には、「年齢」がある。地下に浸透してから、地表に湧き出るまでの時間だ。

火山性温泉: 数年~数十年程度。比較的「若い」温泉。

非火山性温泉: 数百年~数千年。「古い」温泉。

有馬温泉の「金泉」は、約100万年前の海水が地下深くで加熱されたものと考えられている。気の遠くなるような年月をかけて、湧き出た温泉だ。

温泉は再生可能資源

温泉は、再生可能資源だ。

雨水や雪解け水が地下に浸透し続ける限り、温泉は湧き続ける。火山活動が続く限り、火山性温泉は湧き続ける。

ただし、過度な汲み上げは禁物だ。地下水が枯渇すれば、温泉も枯れる。

適切に管理すれば、温泉は永遠に湧き続ける。日本の温泉文化を守るために、持続可能な利用が求められている。

温泉が湧く音を聞く

温泉が湧き出る音を聞いたことがあるだろうか。

「ゴボゴボ」「シューシュー」という音。これは、地下から湧き出る温泉の音だ。高圧の蒸気やガスが、水と一緒に噴き出す音だ。

この音を聞くと、「生きている温泉」を実感できる。地下で起きている現象を、聴覚で感じられる。

まとめ

温泉は、雨水が地下に浸透し、加熱され、地表に湧き出る現象だ。火山のマグマや地温勾配が、地下水を加熱する。

火山性温泉は、数年数十年で湧き出る。非火山性温泉は、数百年数千年かけて湧き出る。

温泉は、再生可能資源だ。雨水が地下に浸透し続ける限り、温泉は湧き続ける。適切に管理すれば、永遠に楽しめる。

温泉が湧き出る瞬間を見たら、地下で起きている驚異的な現象を思い出してほしい。日本の大地からの贈り物を、感謝して楽しもう。