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泉質・科学編

含鉄泉:日本の大地が生み出す茶褐色の温泉|鉄分の効能と特徴を解説

茶褐色に染まる日本の含鉄泉の特徴を解説。空気に触れて色が変わる理由と、鉄分の健康効果を紹介します。

含鉄泉は、赤茶色から黄褐色に染まった独特の温泉だ。まるで紅茶のような色の温泉に浸かる体験は、他の泉質では味わえない。日本では比較的珍しい泉質で、見つけたらぜひ入ってみてほしい。

含鉄泉とは何か

含鉄泉とは、鉄イオンを一定量以上含む温泉を指す。温泉水1kg中に総鉄イオンが20mg以上含まれる場合、含鉄泉と分類される。

鉄イオンの種類によって、「鉄(II)-炭酸水素塩泉」「鉄(II)-硫酸塩泉」などに細分化される。

見た目と特徴

: 赤茶色から黄褐色 匂い: 金気臭(金属の匂い) 触感: 普通 pH: 中性から弱酸性

最大の特徴は、その色にある。赤茶色に染まったお湯は、まるで紅茶のようだ。

なぜ赤茶色になるのか

含鉄泉の面白いところは、湧き出た瞬間は透明だということだ。

地下から湧き出たばかりの含鉄泉は、鉄イオンが溶けた透明な水だ。しかし、空気に触れると、鉄イオンが酸化して鉄錆(さび)になる。この鉄錆が、赤茶色の正体だ。

つまり、赤茶色の温泉は、「新鮮な含鉄泉」の証拠なのである。

色が変わる瞬間を見る

源泉が透明から赤茶色に変色していく過程を見られる施設もある。この変色の過程を見るのは、なかなか面白い体験だ。

化学反応が目の前で起きている。まさに「生きている温泉」を実感できる。

鉄分の健康効果

含鉄泉には、鉄分が豊富に含まれている。ただし、入浴だけでは鉄分の吸収は限定的だ。

鉄分の健康効果を期待するなら、飲泉(温泉を飲むこと)が効果的とされている。飲泉すると、鉄分が体内に吸収され、貧血改善に役立つ可能性がある。

主な効能

含鉄泉の一般的適応症:

  • 貧血(飲泉)
  • 更年期障害
  • 神経痛、筋肉痛、関節痛
  • 冷え性、末梢循環障害
  • 慢性消化器病
  • 慢性皮膚病

入浴による血行促進効果に加えて、飲泉による貧血改善効果が期待できる。

代表的な含鉄泉

有馬温泉の金泉(兵庫県): 赤茶色の有名な温泉。鉄分と塩分を多く含む。

鳴子温泉(宮城県): 多様な泉質が楽しめる温泉地。含鉄泉も湧出する。

川湯温泉(和歌山県): 川原を掘ると温泉が湧き出る珍しい温泉地。

こんな人におすすめ

赤茶色の温泉を体験したい人、貧血気味の人、珍しい温泉を楽しみたい人。含鉄泉は、視覚的にも楽しめる温泉だ。

飲泉の効果

含鉄泉は、飲泉に適した泉質の一つだ。

鉄分を摂取することで、貧血改善に効果があるとされている。ただし、飲泉は必ず施設の指示に従うこと。すべての温泉が飲泉可能なわけではない。

また、鉄分を多く摂取すると便秘になる場合がある。飲み過ぎには注意しよう。

入浴時の注意点

含鉄泉は、浴槽や洗面器に鉄錆が付着することがある。

これは温泉の性質上、仕方のないことだ。施設側もこまめに清掃しているが、多少の鉄錆は「本物の含鉄泉」の証拠と思って楽しもう。

また、白い衣類が赤茶色に染まる可能性がある。タオルは施設のものを使うか、色の濃いタオルを持参することをおすすめする。

まとめ

含鉄泉は、日本では比較的珍しい泉質だ。赤茶色から黄褐色に染まった温泉は、視覚的にも楽しい。

湧き出た瞬間は透明で、空気に触れると赤茶色に変色する。この化学反応を目の前で見られるのも、含鉄泉の魅力だ。飲泉すれば貧血改善にも効果があるとされている。珍しい含鉄泉を見つけたら、ぜひ体験してほしい。