温泉に入ると、金属のような匂いがすることがある。「金気臭(かなけしゅう)」と呼ばれる、鉄の香りだ。この匂いは、含鉄泉の特徴である。硫黄の匂いとは全く異なる、独特の香りだ。
金属の匂いとは何か
金属の匂い(金気臭)とは、含鉄泉から発する鉄の香りを指す。
鉄分を多く含む温泉が、空気に触れて酸化すると、鉄特有の金属臭が発生する。血液の匂いに似ているとも言われる。
なぜ金属の匂いがするのか
金属の匂いの正体は、鉄イオンの酸化によって発生する物質だ。
地下から湧き出た含鉄泉には、鉄イオンが溶けている。この鉄イオンが空気に触れると、酸化して鉄錆になる。この酸化の過程で、金属特有の匂いが発生する。
また、鉄分を含む温泉は、微生物の活動も活発だ。微生物が鉄を代謝する際に、金属臭が発生することもある。
金属の匂いがする温泉の種類
金属の匂いがする温泉は、主に含鉄泉だ。
鉄(II)-炭酸水素塩泉: 最も一般的な含鉄泉。金気臭がする。
鉄(II)-硫酸塩泉: 硫酸塩と鉄の組み合わせ。金属臭が強い。
また、塩化物泉や硫酸塩泉でも、鉄分を含む場合は金属の匂いがすることがある。
代表的な金属の匂いがする温泉
有馬温泉の金泉(兵庫県): 鉄分と塩分を多く含む。金気臭が特徴。
鳴子温泉(宮城県): 多様な泉質があり、含鉄泉も湧出する。
川湯温泉(和歌山県): 鉄分を含み、金属の香りがする。
金属の匂いと硫黄の匂いの違い
金属の匂いと硫黄の匂いは、全く異なる。
硫黄の匂い: タマゴが腐ったような匂い。硫化水素ガスの匂い。硫黄泉に特徴的。
金属の匂い: 鉄の香り。血液のような匂い。含鉄泉に特徴的。
両方の匂いがする温泉もある。その場合、硫黄と鉄分の両方を含む複合泉だ。
金属の匂いの魅力
金属の匂いは、硫黄の匂いほど強烈ではない。しかし、独特の魅力がある。
鉄分が豊富という証拠: 金属の匂いがする=鉄分が豊富=貧血に効く、という連想が働く。
珍しさ: 金属の匂いがする温泉は、硫黄泉ほど多くない。珍しい体験ができる。
温泉の個性: 金属の匂いは、その温泉の個性を表している。他の温泉との違いを、嗅覚で感じられる。
金属の匂いが苦手な人へ
金属の匂いが苦手な人もいる。血液のような匂いは、好みが分かれる。
金属の匂いがしない温泉も、たくさんある。単純温泉、塩化物泉(鉄分を含まないもの)、炭酸水素塩泉など、多くの泉質は金属臭がしない。
自分の好みに合った温泉を選べばいい。
金属の匂いと鉄分の健康効果
金属の匂いがする温泉は、鉄分を豊富に含む。
飲泉すれば、鉄分を体内に取り込める。貧血改善に効果があるとされている。
ただし、入浴だけでは鉄分の吸収は限定的だ。健康効果を期待するなら、飲泉が効果的だ。
嗅覚で楽しむ温泉体験
温泉は、五感で楽しむものだ。視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚。
金属の匂いは、嗅覚で温泉を楽しむ要素の一つだ。匂いを感じることで、温泉の個性を理解できる。「この温泉は鉄分が豊富なんだな」と分かる。
嗅覚を研ぎ澄ませて、温泉の匂いを楽しんでほしい。
まとめ
金属の匂いがする温泉は、鉄分を豊富に含む含鉄泉だ。鉄の香り(金気臭)は、鉄イオンの酸化によって発生する。
硫黄の匂いとは全く異なる、独特の香りだ。好みは分かれるが、「鉄分が豊富」という証拠であり、温泉の個性を表している。
嗅覚で温泉を楽しむのも、温泉体験の一つだ。金属の匂いがする温泉を見つけたら、その香りを楽しんでほしい。鉄の香りに包まれる体験も、温泉の醍醐味なのだから。
