硫酸塩泉は、古くから切り傷ややけどの治療に使われてきた温泉だ。「傷の湯」という別名が示す通り、傷の治癒を助ける効果があるとされている。また、「鎮静の湯」とも呼ばれ、血行促進と鎮静効果を併せ持つ温泉である。
硫酸塩泉とは何か
硫酸塩泉とは、硫酸イオンを一定量以上含む温泉を指す。温泉水1kg中に硫酸イオンが1,000mg以上含まれる場合、硫酸塩泉と分類される。
カルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどと結びついた硫酸イオンが、この温泉の主成分だ。結びつく陽イオンによって、「カルシウム-硫酸塩泉」「ナトリウム-硫酸塩泉」「マグネシウム-硫酸塩泉」などと細分化される。
見た目と特徴
色: 透明から白濁 匂い: ほとんど無臭 触感: サラサラ pH: 中性から弱アルカリ性
パッと見では単純温泉と区別がつきにくいが、成分は全く異なる。
なぜ「傷の湯」なのか
硫酸塩泉は、血管を拡張して血流を改善する効果がある。血流が良くなると、傷の治りが早くなるとされている。
また、鎮静効果もあるため、「鎮静の湯」とも呼ばれる。痛みを和らげる作用があり、古くから傷の治療に利用されてきた。
現代医学が発達していなかった時代、人々は温泉の力に頼って傷を治していた。硫酸塩泉は、そんな時代から愛されてきた温泉なのだ。
3つのタイプ
硫酸塩泉は、結びつく陽イオンによって3つのタイプに分かれる。
カルシウム-硫酸塩泉(石膏泉): 鎮静作用が強く、切り傷、やけど、慢性皮膚病に効果的。「傷の湯」として最も知られるタイプ。
ナトリウム-硫酸塩泉(芒硝泉): 血行促進作用が強く、高血圧、動脈硬化、外傷に効果的。飲泉すると便秘にも効くとされる。
マグネシウム-硫酸塩泉(正苦味泉): 鎮静作用と血行促進作用を併せ持つ。高血圧、動脈硬化に効果的。
主な効能
硫酸塩泉の一般的適応症:
- 切り傷、やけど
- 慢性皮膚病
- 動脈硬化、高血圧
- 神経痛、筋肉痛
- 関節痛、五十肩
- 運動麻痺、関節のこわばり
- 慢性消化器病、便秘(飲泉)
血行促進と鎮静作用の両方を持つのが特徴だ。
代表的な硫酸塩泉
法師温泉(群馬県): 秘湯として有名なカルシウム-硫酸塩泉。
月岡温泉(新潟県): 硫黄成分も含む複合泉。美肌効果も期待できる。
秋保温泉(宮城県): ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉。
湯村温泉(兵庫県): カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉。
こんな人におすすめ
血行を良くしたい人、高血圧の人、傷の治りを早めたい人、動脈硬化が気になる人。硫酸塩泉は、血管系の健康を気にする人に最適だ。
飲泉の効果
硫酸塩泉は、飲泉(温泉を飲むこと)にも適している泉質だ。
ナトリウム-硫酸塩泉を飲むと、便秘解消に効果があるとされている。ただし、飲泉は必ず施設の指示に従うこと。すべての温泉が飲泉可能なわけではない。
まとめ
硫酸塩泉は、古くから「傷の湯」「鎮静の湯」として愛されてきた温泉だ。血管を拡張して血流を改善し、傷の治癒を助ける効果がある。
高血圧や動脈硬化が気になる人、血行を良くしたい人には、硫酸塩泉が最適だ。飲泉すれば便秘解消にも効果があるとされている。伝統的な治療の湯を、ぜひ体験してほしい。
