泉質・科学編温泉の色・匂い

黄金色・黄褐色の温泉、色の正体

黄金色・黄褐色・茶褐色に見える温泉が、なぜその色になるのかを解説。鉄分の酸化、よう素の酸化、塩化物泉のにごり、硫黄華の淡黄、腐植質(モール泉)など原因が多様であること、「黄金の湯」と呼ばれる名湯の例、見え方が変わる理由、入浴時の注意を日本温泉協会・環境省の解説にもとづいて中立的に整理します。

公開日: 2025.12.24

泉質・科学編温泉の色・匂い

黄金色・黄褐色の温泉、色の正体

黄金色・黄褐色・茶褐色に見える温泉が、なぜその色になるのかを解説。鉄分の酸化、よう素の酸化、塩化物泉のにごり、硫黄華の淡黄、腐植質(モール泉)など原因が多様であること、「黄金の湯」と呼ばれる名湯の例、見え方が変わる理由、入浴時の注意を日本温泉協会・環境省の解説にもとづいて中立的に整理します。

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この記事の目次

  1. 1「黄金色」は泉質名ではなく見た目の呼び方
  2. 2黄金色・黄褐色になる主な原因
  3. 3「黄金の湯」と呼ばれる名湯
  4. 4同じ湯でも見え方が変わる理由
  5. 5入浴時の注意:着色と足元
  6. 6よくある質問
  7. 7まとめ
  8. 8出典

黄金色・黄褐色・茶褐色に見える温泉は、見た目の個性が強く、「黄金の湯」と呼ばれて親しまれることも多い。だが、湯が黄〜金色に見える理由は一つではない。

結論から言えば、黄金色・黄褐色のもとになる成分は複数あり、原因によって色合いも見え方も変わる。鉄分の酸化、よう素の酸化、塩分の濃い湯のにごり、硫黄の析出物が帯びる淡い黄、そして植物由来の腐植質まで、背景は意外なほど多様だ。

この記事では、黄金色・黄褐色になる原因の幅広さ、「黄金の湯」と呼ばれる名湯の例、同じ湯でも見え方が変わる理由、入浴時の注意を整理する。なお、白っぽく濁る湯の仕組みは白濁の湯(にごり湯)が白く濁る理由に、赤褐色をつくる鉄の科学のくわしい解説は含鉄泉が赤褐色になる理由と名湯に譲り、ここでは黄〜金色寄りの見え方に焦点をあてる。

本記事は一般的な情報であり、特定の効能や美容効果を保証するものではありません。色の濃い湯は底が見えにくく滑りやすいことがあります。持病のある方や体調のすぐれない方は、無理をせず施設の案内に従ってください。

「黄金色」は泉質名ではなく見た目の呼び方

まず押さえておきたいのは、「黄金色」「黄褐色」「茶褐色」は正式な泉質名ではなく、湯の見た目を表す言い方だという点だ。旅行案内では「黄金の湯」のように魅力的な言葉で紹介されるが、それ自体が特定の成分や効能を意味するわけではない。

同じ黄でも、明るく透き通った黄金色、にごりを伴う黄褐色、茶色に近い濃い褐色では、背景にある成分が違うことがある。だから黄金色の湯を見たときは、「この色は何の成分によるものか」を入口に考えると、実態に近い理解ができる。確実なのは、見た目ではなく脱衣所や浴場に掲示された温泉分析書で泉質名を確認することだ。泉質全体の見取り図は温泉の泉質ガイドを参照してほしい。

黄金色・黄褐色になる主な原因

黄〜金色に見える原因は多様だ。日本温泉協会の「温泉の色」の解説などをもとに、代表的なものを整理すると次のようになる。色合いはあくまで傾向で、実際の湯は複数の成分が混じり合っていることも多い。

主な原因見え方の傾向色づくきっかけ・背景
鉄分の酸化黄褐色〜赤褐色(淡いと黄色寄り)空気にふれて鉄が酸化し微粒子になる
よう素(ヨウ素)の酸化薄い黄〜薄茶色海水由来の塩化物泉でよう素が酸化する
腐植質(フミン酸など)紅茶色〜あめ色(モール泉)泥炭層などを通り植物由来の成分が溶け込む
硫黄の析出物(硫黄華)乳白色に淡い黄を帯びる硫黄成分が空気にふれて析出する
塩分の濃い湯のにごり黄褐色のにごり湯になることも鉄やほかの成分とあわさり濁る

このうち、最も色が濃く出やすいのが鉄分の酸化だ。地下では透明に近かった湯が、地表で空気にふれて鉄が酸化し、黄褐色〜赤褐色の微粒子となって湯を色づかせる。鉄分が比較的少なければ黄〜黄緑寄り、多くなるほど茶褐色へと深まっていく。鉄が赤褐色をつくる化学的な仕組みのくわしい説明は含鉄泉が赤褐色になる理由と名湯に譲るが、黄金色寄りの湯にも鉄がかかわっていることは多い。

**よう素(ヨウ素)**も見落とせない原因だ。海水が源になっている塩化物泉では、湧出時は無色透明でも、含まれるよう化物イオンが空気にふれて酸化すると、薄い黄色から薄茶色に変わることがある。よう素を一定量以上含む湯は「含よう素泉」という療養泉に分類されるが、その基準は環境省の「鉱泉分析法指針」で、温泉水1kg中によう化物イオンを10mg以上含むこと、と定められている。

腐植質による色も、黄金色とは少し系統が異なるが、黄褐色〜あめ色の温泉として広く知られる。泥炭層などを通って湧き出す湯には、植物が長い年月をかけて分解されてできたフミン酸などの腐植物質が溶け込み、紅茶やウーロン茶のような色を帯びる。北海道の十勝川温泉などに代表される、いわゆる「モール泉」がこれにあたる。

このほか、硫黄泉でも析出した硫黄華が淡い黄味を帯びることがあり、塩分の濃い湯がほかの成分とあわさって黄褐色のにごり湯になることもある。匂いを伴う硫黄由来の白濁や黄味については硫黄泉の匂いと色でくわしく扱っている。

「黄金の湯」と呼ばれる名湯

黄金色・黄褐色の湯は、各地で「黄金の湯」「金泉」などと呼ばれて親しまれてきた。代表的なものを挙げると、いずれも鉄分が色の背景にある。

兵庫県の有馬温泉「金泉」は、鉄分と塩分を多く含む湯で、湧出時は無色透明に近いが、空気にふれて鉄が酸化することで赤褐色〜金色に変わる。塩分が濃いことでも知られ、その性格から「金泉」の名で呼ばれてきた。

群馬県の伊香保温泉「黄金(こがね)の湯」も、鉄分を含み、湧出時は無色透明だが空気にふれて茶褐色に色づく。古くから親しまれてきた濁り湯で、同じ温泉地に色の異なる別の源泉(無色透明系の湯)もあることが、見た目で泉質を決めつけられないことをよく示している。

これらの名湯は、いずれも「黄金」という言葉が色の印象を表しているのであって、特別な効能を約束する呼称ではない。掲示された泉質名や温泉分析書で、その湯がどの型に当たるかを確認するのが確実だ。

同じ湯でも見え方が変わる理由

黄金色・黄褐色の湯は、訪れるたびに表情が違うことがある。これは、色のもとになる多くの反応が空気にふれてから進むためだ。

鉄やよう素の酸化は、湯が地表に出て酸素にふれてから時間をかけて進行する。そのため、湯口の近くは新しい湯で透明に近く、浴槽の奥や時間のたった湯ほど色が濃く見える、ということが起こる。気温や湯温、かけ流しの勢いによっても日々変動するため、「いつも同じ色」とは限らない。

ここで誤解しやすいのが、「色が濃いほど成分が濃い」「濃く色づくほど良い湯」という見方だ。色の濃さは、酸化がどれだけ進んだかや浮かんでいる粒子の量に左右されるもので、そのまま成分の濃さや効能を表すわけではない。色はその湯の個性を知る手がかりにはなるが、優劣の指標ではない。

入浴時の注意:着色と足元

黄金色・黄褐色の湯では、いくつか実用的な注意点がある。

まず、鉄分や色素を含む湯は、白っぽいタオルや衣類に色移りすることがある。施設の備品タオルを使えるならそれを優先し、自前の白いタオルや水着を使うときは色がつく可能性を意識しておくとよい。

次に、にごりを伴う湯では底や段差が見えにくい。さらに、酸化した鉄分などが浴槽の縁や床、湯口まわりに沈着してぬめり、滑りやすくなっていることもある。色の派手さに目を奪われやすい湯だが、出入りはへりや手すりにつかまり、ゆっくり動くのが無難だ。

成分が濃く出ている湯では、いきなり長湯をせず短めの入浴から試すとよい。入る前にかけ湯をして体を慣らし、のぼせる前に上がる、という基本は色の濃い湯でも変わらない。気になる湯を探すときは施設一覧から比べられる。

よくある質問

温泉が黄金色や黄褐色に見えるのはなぜですか

原因は一つではありません。最も多いのは鉄分が空気にふれて酸化し、黄褐色〜赤褐色の微粒子になるためです。ほかに、海水由来の塩化物泉でよう素が酸化して薄い黄〜薄茶色になる場合や、植物由来の腐植質(フミン酸など)であめ色を帯びる場合などがあります。色は背景にある成分のヒントになります。

「黄金の湯」は特別な効能がある温泉ですか

「黄金の湯」は色の印象を表す呼び名で、正式な泉質名ではありません。有馬の金泉や伊香保の黄金の湯のように鉄分が色の背景にあることは多いですが、呼び名そのものが効能を約束するわけではありません。実際の性格は掲示された泉質名や温泉分析書で確認してください。

源泉は透明なのに浴槽は黄色いのはなぜですか

鉄やよう素などの色のもとになる反応の多くは、湯が空気にふれてから進むためです。湧きたては酸化が進んでおらず透明に近く、空気にふれる時間が長くなるほど黄〜褐色に色づきます。色の濃さは古さではなく、酸化の進み具合を表しています。

色が濃い温泉ほど成分が濃く効果が高いのですか

そうとは限りません。色の濃さは酸化の進み具合や浮かんでいる粒子の量で決まるもので、成分の濃さや効能を直接表すわけではありません。色はあくまで湯の個性を知る手がかりであり、優劣の指標ではありません。

黄褐色の湯に入るとき気をつけることはありますか

鉄分や色素で白いタオルや衣類に色移りすることがあるため、備品タオルや色の濃いものを使うと安心です。にごりを伴う湯は底や段差が見えにくく、縁などに成分が沈着して滑りやすいこともあります。出入りはゆっくり、成分の濃い湯は短めの入浴から試してください。

まとめ

黄金色・黄褐色・茶褐色の温泉は、見た目の個性が強く「黄金の湯」と呼ばれて親しまれるが、その色をつくる原因は一つではない。鉄分の酸化、よう素の酸化、塩分の濃い湯のにごり、硫黄の析出物の淡い黄、植物由来の腐植質(モール泉)など、背景は多様だ。有馬の金泉や伊香保の黄金の湯のように、鉄が色の背景にある名湯も各地にある。

旅行者としては、色はその湯の個性を知る手がかりであって効能の指標ではないこと、空気にふれてから色が変わるため見え方が一定しないこと、そして着色や足元に注意すれば十分に楽しめることを押さえておきたい。白く濁る湯の仕組みは白濁の湯(にごり湯)が白く濁る理由、赤褐色をつくる鉄の科学のくわしい解説は含鉄泉が赤褐色になる理由と名湯、泉質全体の見取り図は温泉の泉質ガイドから確認してほしい。

出典

  • 日本温泉協会「温泉の色」
  • 日本温泉協会「温泉の泉質のいろいろ」
  • 環境省「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」
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