時には、サウナよりも温泉に浸かっていたいと思う施設がある。そう感じさせる施設には、共通点がある。まず、とろけるような質感の温泉が湧いていること。そして、自然と一体化できる庭園や森をモチーフにした露天風呂があることだ。この条件が揃っていれば、小生はサウナよりも温泉に入ることを優先する。この日訪れた「天然湧湯 吟湯 湯治聚落（ぎんとう とうじしゅうらく）」は、そんな温泉が素晴らしい施設の代表格だ。 「天然湧湯 吟湯 湯治聚落」は、神戸市北区の神戸三田プレミアムアウトレットから約500mと近い場所にある。神戸三田プレミアムアウトレットは、小生が学生時代によく来た場所だが、その近くにこんな素晴らしい温泉施設があることを知らなかった。当時は、サウナ・温泉に対する意識の低い日々を過ごしていたこともあり、ショッピングのみを目的に訪問していたのだ。ショッピングは疲れるものだ。一人で来ていても疲れるが、友人や恋人の買い物に付き合わされるのはもっと疲れる。笑顔を振り撒きながら「よく似合ってるよ」なんて優しい言葉をかけるが、本心はさっさと帰ってサウナに行って寝たいのだ。今の小生なら、ショッピングに行こうと誘われたら、「ここから500mの位置に最高の温泉施設があるんだけど、そっちに行かない？そして、美味しいご飯を食べて帰らない？」と逆提案するだろう。 無駄話が長くなってしまったが、「天然湧湯 吟湯 湯治聚落」に到着した。入り口の門構えから立派であり、門を抜けると庭園の中の通路を進んで入り口へ。受付を済ませて大浴場に向かう廊下も非常にレトロだ。庭園を囲むように施設の通路があり、どこを歩いても庭を眺めることができるのだ。大浴場以外も、こだわりを持ってテーマ性を意識していることが伺える。ますます、温泉への期待が高まった。 秒速で服を脱ぎ、大浴場に入った。刹那、スチームサウナか？と疑うほどの湯気に包まれる。若干、温泉の香りも漂う。内湯に用意された天然温泉の浴槽からこんこんと湯気が立ち昇っている。暗めの照明も味方して、神秘的な空気感が漂っている。その天然温泉に浸かっている人の顔をみると、どの人も意識を失っているように見える。それも、とても気持ちよさそうに意識を失っている顔だ。そんなに気持ちいい温泉なのか。。と早く入りたい気持ちを抑えて身を清めた。 まずは、内湯の天然温泉に入る。浴槽に足を踏み入れた刹那、ヌルヌルの感覚が小生を包み込む。化粧水に足を入れたような、もっと柔らかいような気もする。そのまま下半身、上半身の順に沈めていく。湯に浸かり、手で肌を撫でるとツルツルと滑るような感覚。とろけるような温泉とは、まさにこの質感のことを言うのだろう。広い浴槽で手足を伸ばし、極上の時間が訪れる。照明を落とした浴室内に立ち込める湯気が、さらに雰囲気を良くしている。永遠にお湯に浸かっていられるような気がしたが、さすがは天然温泉。浸かっているうちに、どんどん身体が温まってくる。そのまま水風呂に直行した。 水風呂は5人くらいが入れるスペースで深く、水温は18度くらいで優しい。サウナに入っていないが、ものすごい爽快感に包まれる。サウナ→水風呂→外気浴がいつものルーティンだが、天然温泉→水風呂→外気浴の流れもとてもいい。水風呂を出て露天風呂の外気浴スペースに移動する。露天風呂は庭園をテーマにしており、石造りの庭に木が植えられ、自然と一体化できるような設計になっている。季節も秋から冬。紅葉を眺めながらの外気浴は、いつも以上にリラックスと幸福感を与えてくれる。 いつものことだが、外気浴をしていると自然と笑顔になってくる。意識的にそうしているわけではない。サウナや温泉に入り、水風呂に入り、椅子に座るとそうなってしまうのだ。不思議だ。小生は、長期的に非常に幸せな人生を歩めているのだが、その最たる要因が温泉・サウナに出会えたことだろう。これは間違いないと思う。サウナ好きな父親の影響で毎日サウナに入り、その日一日をリセットして、また新しい明日を迎える。この習慣を構築できたことは、僥倖だったと言えるだろう。 結局この日は、温泉と水風呂を4セット繰り返した。サウナには入らなかったが、最高の気持ちよさを手に入れることができた。さて、お風呂を出た後は、食事の時間だ。

この施設を訪問する前に、施設内のレストランについても調べていた。どうやら、「油淋鶏定食」が人気らしい。インターネットで写真を調べたが、とても美味しそうだった。レストランに入ると、店員が「ご注文はどうします？」と聞いてくる。やや被せ気味に「油淋鶏定食で」と注文した。しばらくして料理が運ばれてきた。ウォーミングアップにスープで刺激を入れ、カリッと揚がった鶏肉にかぶりついた。最高に美味しい。これまで食べた油淋鶏の中でもトップクラスだ。温泉に入り、味覚が研ぎ澄まされ、幸福感が上がっているので何を食べても美味しいのだが、それを差し引いても美味しい。サウナ・温泉で気持ち良くなって、美味しい食事を食べる最高のルートが今夜も完成した。 旅の記録を執筆していくと、毎回同じ流れになっている。サウナ→美味しい食事だ。しかし、毎回異なる体験があるので飽きることはない。また、小生は、これを当たり前だとは思っていない。毎回、幸せを噛み締めながら旅をしている。サウナに入れることや、食事を食べられることに感謝している。そして、また次回素晴らしい旅ができるように仕事を頑張るようにしている。色々なことが当たり前になると、目の前の体験が霞むことがある。集中できなくなる。なので、毎回感謝をしながら旅をすることが大切だと思っている。 1泊2日の初日が終了した。午前中は「三田天然温泉 寿ノ湯」で天然温泉とサウナを満喫し、夜は「天然湧湯 吟湯 湯治聚落」で天然温泉に骨抜きにされた。最高の一日だった。ホテルに戻り、ゆっくりと寝ることにする。明日は、小生が以前から気になっていた大型施設を訪問する。サウナの規模も兵庫県最大級ではないだろうか。兵庫県川西市に位置するその施設の名は、「SPAキセラ川西」である。