
Vol.1
静岡県
2026/3/19-22 静岡・山梨・長野サウナ旅
「サウナしきじ」の体験談
聖地の天然水が、旅の始まりを告げる
📅2026/3/1910:00
人生において、様子見は必要ない。
旅を重ねてきた小生が、あらゆる経験を通じて確信するようになったことである。旅の最初に最高の場所に行く。食べたいものを最初に食べる。会いたい人に真っ先に会いに行く。自分の欲望を最優先し、衝動的に動き、無駄な計算は一切しない。なんとなくそうしていたら、旅も日常もずっと面白くなった気がする。今回の旅の出発地として「サウナしきじ」を選んだのも、そういう理由からだ。山梨・長野という未知の領域へ踏み込む旅の第一歩目を、サウナの聖地から始めると決めていた。
この日は、朝5時に目が覚めた。眠そうだと思ったかもしれないが、不思議なことにその瞬間からフルパワーで身体は動いた。サウナしきじの天然水が脳裏に浮かぶと、睡眠欲など消し飛んでしまうのだ。身支度を整え、6時台の高速バスに乗り込む。遠方への旅では車を使わないのが小生のポリシーである。運転に意識を奪われれば、道中の景色も移動の高揚感も楽しめない。バスの窓から流れる景色を眺めながら、ただ目的地のことだけを考える。西明石駅まで移動し、そこから新幹線に乗り換えた。
11時前に静岡駅に到着し、即座にタクシーに乗り込む。「サウナしきじまでお願いします」と告げた刹那、運転手がニヤッとした。おそらく毎日のようにサウナ愛好家を乗せているのだろう。長時間の移動で身体の疲れは確かに溜まっていた。しかし、疲れよりも渇望の方が遥かに大きかった。あの名水に全身を沈めたい。あの美味しい水を飲みたい。その欲望が最高潮に達した状態で施設の前に立った。
前回の訪問は2025年9月だったが、「またここに来ることができた」という喜びが込み上げてくる。施設に足を踏み入れると、薬草の香りが漂ってきた。この香りがまた、小生をサウナしきじの世界へと引き込む。
平日の午前中とあって、大浴場に人は少ない。10人ほどだろうか。これは僥倖だ。前回は土日に訪問したので混雑を避けられなかったが、今日は悠々とサウナと水風呂を楽しめるではないか。水風呂にはコンコンと天然水が注がれている。この光景を見ただけで、来て良かったと実感できる。
1セット目は、フィンランドサウナを選んだ。温度計は115℃を示している。下段に座ってもかなり暑い。ドライサウナでこの温度はそうそうお目にかかれない。そしてふと気づくと、隣に見覚えのある顔があった。とある競技で超有名なアスリートだ。名前を出すのは控えるが、その世界では誰もが知る人物である。しかし、サウナの中では、有名アスリートである彼も凡人である小生も、立場は全く同じだ。みんな汗をかき、みんな熱さに耐え、みんな水風呂を目指している。サウナの中では誰もが平等。これがサウナの素晴らしさではないだろうか。彼もまた、自分が誰であるかなどどうでもいいというように、ただサウナに集中していた。
十分に身体を熱した後、水風呂へ向かった。地下から汲み上げた天然水が、惜しみなく注がれている。身を沈めた刹那、包み込まれるような感覚があった。水道水とは全く違う、柔らかさと清涼感が同時に押し寄せてくる。じわじわとスースーする爽快感が全身に広がっていく。そして、お待ちかねの時間である。注がれる水に手を伸ばし、その水をゴクっと飲み込む。甘さすら感じるほどに美味しい。体の外と内の両側から天然水の恵みを受けてたまらなく気持ちいい。休憩椅子に移動すると、1セット目にして意識が飛びそうになった。
しばらく放心状態に陥っていたが、回復したので2セット目を開始する。1セット目と同じくフィンランドサウナに入り、今度は上段へ移動した。1段上がるだけで体感温度が別次元だ。115℃の熱気が頭を直接炙る。余計なことは何も考えられない。思考が蒸発していくような感覚だ。これもまたサウナの魅力である。再び極上の水風呂へ飛び込んだ。
3セット目は、名物の薬草スチームサウナに挑戦することにした。入った刹那、頭が火傷しそうなほどの猛烈な蒸気に包まれ、戦意を喪失した。なんとかベンチに腰掛けようとしたが、即座に限界を迎えて退散した。強烈な暑さに耐えられなかったことを深く反省しつつ、フィンランドサウナに移動して身体を立て直した。そして再び水風呂へ飛び込む。注がれる天然水に手を差し伸べ、思い切り飲んだ。うまい。本当にうまい。甘さすら感じる水が喉の奥まで一気に流れ込んでいく。体の全てが、この水に満たされている感覚だ。休憩椅子に倒れ込むと、気がついたら意識が飛んでいた。
4セット目(最終セット)もフィンランドサウナで締めた。永遠にサウナと水風呂を繰り返したい衝動に駆られるが、一番気持ちいいタイミングで終了するのが小生のやり方だ。3〜5セットのどこかで、内側から「よし、OKだ」という合図が送られてくる。その声に従い、その施設でのサウナ活動に幕を下ろすのだ。限界まで体を熱し、吸い込まれるように水風呂に入る。極上の天然水が、全身をゆっくりと冷やしていく。思い返すと、今日の4セットで体の外からも内からも、この名水をたっぷり吸収した。これ以上何も要らない。

サウナしきじ名物の「生姜焼き定食」と「アジフライ」を堪能
サウナを出た後は、2階の食堂へ向かった。名物の生姜焼きとアジフライを注文する。しばらくして運ばれてきた定食を一口食べた刹那、深く頷いてしまった。天然水で炊いたご飯、サウナで整った身体に染み渡るみそ汁、そして肉の旨味が凝縮された生姜焼き。人間としての喜びを噛み締めながら、一粒残さず平らげた。
食後はリクライニングルームで少し昼寝をした。
そこから余韻に浸りつつ再び静岡駅へ戻り、今度は山梨県を目指す。これから、山梨・長野という未知の領域に足を踏み入れる。旅の次の目的地は、日本中のサウナ愛好家が死ぬまでに一度は行ってみたいと名をあげる施設だ。富士の麓に佇む「ホテルマウント富士」である。最初に最高の場所へ行く。そして次もまた、最高の場所へ向かう。小生の旅に、様子見の時間はないのだ。

