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2026年10月 撮影 — 編集長

長崎・佐賀サウナ旅 — Vol.5 / 5 — 2026/10/4

「御船山楽園ホテル らかんの湯 (夜)」の体験談

闇夜の焚き火に、自我が溶けていく

✦ 2026年10月 訪問文・写真 編集長佐賀県

この旅の行程

  1. 01島原温泉 ホテル南風楼
  2. 02蟹御殿 有明海の湯
  3. 03JIN6サウナ
  4. 04OND HOTEL
  5. 05御船山楽園ホテル らかんの湯 (夜)
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この旅の行程

  1. 01 / 10/2島原温泉 ホテル南風楼
  2. 02 / 10/3蟹御殿 有明海の湯
  3. 03 / 10/3JIN6サウナ
  4. 04 / 10/4OND HOTEL
  5. 05 / 10/4御船山楽園ホテル らかんの湯 (夜)
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人生最期の瞬間を、どこで迎えたいか。 そんなことを本気で考えたのは、生まれて初めてだったかもしれない。その答えが、この夜に見つかったのである。 午前中に「OND HOTEL」で徹底的に心身をリフレッシュした小生は、その後ホテルに戻り、夜に備えてひたすら休憩していた。ベッドに横たわり、天井を眺める。何もしない。何もしないことこそが、夜への準備なのだ。今夜は、日帰りで「御船山楽園ホテル らかんの湯」を訪問する。 「らかんの湯」は、今年の4月に家族で訪れた思い出の場所だ。つつじが満開の御船山楽園を歩き、ホテルに泊まり、サウナ談義に花を咲かせながら夕食をいただいた。そしてここは、日本中の温泉とサウナを渡り歩いてきた小生が「日本一の施設」だと確信した聖域でもある。その凄さを知っている身として、武雄にやってきて、ここを訪問しない理由などない。むしろ、この夜のために武雄に来たと言っても過言ではないのだ。 日が落ちた武雄の街を抜け、御船山の麓へと車を走らせる。夜の御船山は黒い巨大な影となり、空との境界だけをかすかに浮かび上がらせていた。 19時30分、ホテルに到着した。入り口の扉が開いた刹那、異世界への旅が始まった。暗闇の中に、チームラボが手がけた無数のランプが灯り、エントランスを幻想的な光で満たしている。半年前と同じ光景のはずなのに、何度見ても息を呑む。ランプの森で受付を済ませ、いざ大浴場へ。 大浴場へと続く長い廊下の途中に、レストランがある。宿泊客たちが、実に幸せそうな表情で食事に興じていた。その光景を横目に、小生は一つの事実に気がついた。宿泊客が食事に夢中ということは、大浴場は空いているということだ。思わず、口角が上がる。きっと悪い顔をしていたに違いない。 大浴場の扉を開けると、靴箱には5つほどしか履き物がない。浴室に入ると、予想は確信に変わった。ほぼ貸切状態である。伝説の施設「らかんの湯」を、貸切に近い状態で利用できるのだ。ガッツポーズをした。 夜の「らかんの湯」の雰囲気は、凄まじかった。 露天風呂は、ほぼ真っ暗である。わずかな灯りが浴室全体の輪郭だけをぼんやりと浮かび上がらせ、武雄温泉の湯気が、闇夜に向かって静かに立ち昇っていく。焚き火エリアや喫茶ラウンジも闇に沈み、焚き火の炎だけが激しい光を放っていた。4月の訪問では夕方から入浴し、夕食後は大浴場に戻らなかった。だから、夜の世界がこれほど幻想的だとは、想像すらしていなかったのである。 身を清め、露天風呂の武雄温泉にゆっくりと身を沈めた。とろりとした柔らかな湯が、全身を包み込む。闇の中で耳を澄ませると、風に揺れる木々のざわめきと、湯が流れる音が聞こえてくる。夜の御船山のリズムだ。そのリズムに身を委ねながら、しばらく体を温めた。 ここから先のことは、正直に言うと、あまり順序立てて覚えていない。らかんの湯が誇るサウナを徹底的に味わい尽くし、焚き火を囲んだ外気浴で意識を失い、セットの合間には喫茶ラウンジでドリンクや軽食を楽しむ。そして再び温泉やサウナに入り、焚き火の外気浴で、ラウンジで……。その流れを、永遠に繰り返したのである。 1セット目は、ほうじ茶の香りが漂うドライサウナへ。 ここも貸切であった。美しいデザインのサウナ室は外界から完全に遮断され、武雄の森のサウンドだけが静かに流れている。薄暗い空間に、ikiストーブが鎮座している。その傍らには、サウナ専用に焙煎・抽出したという嬉野産のほうじ茶が用意されている。ひしゃくですくい、ストーンに浴びせた。ジュワッという音とともに、芳醇なほうじ茶の香りが室内に立ち込める。誰もいないのをいいことに、鼻を鳴らして思い切り吸い込んだ。人目を気にせず、香りと音だけをひたすらに感じる。贅沢とは、きっとこういうことを言うのだ。 限界まで熱した後は、露天の水風呂へ。武雄温泉の湯を16℃まで冷却した、らかんの湯ならではの水風呂である。温泉を冷やしているのだから、柔らかくないはずがない。まろやかな冷水が、火照った体を優しく、しかし確実に冷やしていく。 水風呂を出て、2階の焚き火エリアへと上がる。ここも貸切だった。ウッドデッキに寝転がると、焚き火が燃えるスモーキーな香りが漂い、薪がパチッと爆ぜる音が闇に響く。空を見上げ、森のリズムに呼吸を合わせる。吸って、吐いて、また吸って。次第に、自分と森との境界が曖昧になっていく。整いを通り越して、自我そのものが消えていくような感覚であった。 いつまでそうしていたのか分からない。気がつけば、喫茶ラウンジで焚き火を囲み、プリンを食べていた。この空間もまた、焚き火の灯りだけが室内を照らしている。 2セット目は、薪サウナへ向かった。 まるで秘密の世界への入り口のような扉を開けると、絶妙な照明に照らされた、美しい造形の階段が現れる。一段ずつ登っていくと、その先で、あの巨大な薪ストーブが待っていた。半年ぶりの再会である。久しぶりだな、と心の中で声をかけた。圧倒的な大きさのストーブに向かって、水を思い切りぶっかける。心地よい蒸気が室内に広がり、旅の高揚でざわついていた心を、静かに落ち着かせていく。またしても貸切だったので、ベンチに横になり、寝ながらのサウナ浴を楽しんだ。薪の熱に、じっくりと全身を包まれる。最高に気持ちいい。 その後も同じリズムで、水風呂、焚き火の外気浴、ラウンジでの休憩を繰り返した。3セット目は再びほうじ茶のドライサウナ、4セット目は再び薪サウナ。そして驚くべきことに、全てのセットを貸切で利用できたのである。日本一だと確信している施設を、夜の闇の中で独り占めする。これだけでも、奇跡的な体験と言っていい。
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闇夜の中で焚き火を見つめている時、そのまま何者かに闇へと引き摺り込まれ、「あなたの人生は、この瞬間に終了です」と宣告されたとしても、これだけ極上の体験ができたのなら「本望です」と答えられるだろう。それほどの時間だった。縁起でもない話だと思われるかもしれない。しかし、本気でそう思えるほどの夜だったのだ。できることなら、人生最期の瞬間は、ここで迎えたいものである。 らかんの湯が特別な理由は何か。小生は、大浴場を出たくない、帰りたくない、という感情が、時間が経つほどに増していくことにあると思っている。他の施設では、いくら気持ちよくても、いずれ「そろそろ出ようか」という気分になる。ところが、らかんの湯だけは逆の感情が働くのだ。入れば入るほど、出たくなくなる。温泉とサウナの充実ぶり、御船山の森に囲まれた自然豊かな世界観、洗練された喫茶ラウンジ、そして焚き火のスペース。その全てが一つに重なり、永遠にここに滞在していたいと思わせてくれる何かが、この場所にはあるのだ。 しかし、無情にも日帰り入浴の時間制限である22時がやってきた。時間の上限がなければ、一日中大浴場にいてもいいくらいである。後ろ髪を引かれるどころか、髪の毛を根こそぎ持っていかれるような思いで、大浴場を後にした。 駐車場に戻り、車に乗り込む。しかし、エンジンをかけることができなかった。あまりに素晴らしい体験の余韻に、しばらく車を出すことができなかったのである。暗い車内で、フロントガラス越しに、夜の御船山の影をぼんやりと眺めていた。 その間、無意識に手が動いていた。気がつけば、スマホの画面には予約完了の文字。翌朝の日帰り入浴を、予約してしまっていたのである。 朝の部は、男湯と女湯が入れ替わる。今夜とは全く異なる、キューゲルのアロマが香る白いサウナの世界が待っているはずだ。 旅の最終日である明日の朝も、小生は再びここにやってくる。

この記事の施設

御船山楽園ホテル佐賀県 武雄市✦ 2026年10月 訪問施設ページを見る(営業時間・料金・設備) →

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